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それにしても、タイは不思議な国だ

今日の日経新聞朝刊のタイの記事。
「タイ混乱、景気・市場に影」の見出しは
確かに的を射ている。実は年明け早々、タイを訪れた。
タイはすでに何回もビジネスで訪問しているが、
今回は特に興味深かった。

     

先日、日本の親しい社長と東京で食事したが、
意外にも今、タイで起こっている事を知らなかった。
アジアビジネスが本業の私には、
非常に関心が強い出来事である。
私が訪れたのは、1月6日~7日。
すでにこのときから、バンコク封鎖の噂は流れていたが、
13日からはデモ隊によるバンコクの一部閉鎖が
実際に行われている。
この先どうなるかは予断が許さないが、
今回のことに限らず、つくづくタイは
本当に不思議な国だと思う。

今回の反政府勢力との衝突で、
日本でも多くの専門家が
その原因と今後を解説している。
NHKでもやっていた。
私なりの理解は、富裕層の反政府勢力と
貧困層の政府側の衝突が根っこにある。
これは、ずっと繰り返してきていること。
深い話は専門家に委ねるとして、
ベトナムでのビジネス展開と連動して、
タイビジネスにも10年近く関わってきている私には、
何ともったいないことをする国なんだろうと
思ってしまうのである。

タイは少し前までは、空前の好景気。
カードローンの破産者が多発するほどに消費バブル。
人口は6600万人弱で人口ピラミッドは
日本にそっくりで、他の東南アジアのように
この先爆発的なマーケットの伸びは期待できないが、
今現時点では、東南アジアの中では群を抜いて、
経済が発展し富裕層も多い。
3年前の大洪水の影響ももろともせず、
空前の製造業の進出ブーム。
それとあわせての消費が絶好調。
現地の友人社長も忙しすぎて嬉しい悲鳴。
また、昨年、バンコクの海外からの観光客の数も
ロンドンを抜いて世界一になったと聞く。
今後も東南アジアでビジネスを考えるときに
視野に入れるべき国のひとつであるのは間違いない。
世界から見ても、魅力的な観光地であり、
ビジネスの場所なのだ。
最低でもベンチマーク先としては最適だ。

こんなに世界から注目されているにもかかわらず、
数年前の空港封鎖や今回のデモ。
日本側から見たら、こんなリスキーな場所は
敬遠したくなるだろう。
現に私の周りでもビジネス視察を
取り消したりする経営者も何人かいる。
日本側のニュースだけを見ていたら、
事実よりも遥かにリスキーに感じる報道だから
仕方がないが。
こんな訳で、私の今までのタイの印象は、
リスキーな国なのではなく、不思議な国なのだ。
これだけ国際的に注目されている今でも、
外から見た自分が見えていないようだ。
現地にいると、デモにしても、
穏やかな空気が流れている。
弁当が配られ屋台が出ているという話もある。
だから、当事者はそれこそ、
単なる内輪もめ程度の感覚かもしれない。
しかし、グローバル化は進んでいる。
瞬時に映像やニュースが世界を駆け巡る。
こういうグローバル感が政府にも
国民にも欠けているのだと思う。
ある意味では、やんちゃで未熟。
良し悪しは別として、
アジアのどこかの大国のように
情報統制ができているわけではない。
うわさや誤解が霧のように覆っている国。
だからこそ、ビジネスをする私たちは現場に
足を運んで判断するしかないのである。

今、東南アジアマーケットは
世界中から注目されている。
日本の経営者でもまずは、シンガポールで
試金石という考えも多いが、
私は率直に、東南アジアマーケットは
タイをベンチマークするのが何においても
ベターな選択だと思う。
例えば、ベトナムと比べてみても、それが良くわかる。
タイで10年から20年前に起こったことが、
今、ベトナムで始まろうとしている。
飲食、小売、おしゃれなど、都市交通、
大型シヨッピングモールなど、
多くの部分で同じ道を歩みだしている。
東南アジアビジネスは、国別だけではなく、
一体で捉える鳥の目の視点と、
個別の国や都市同士をよく比較してみる
蟻の目の視点が重要なのだ。

そういう意味では、タイというのは良い意味でも
反面教師としても大事な存在である。

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