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【第6章】ところでクラウドは信用できるのか


「本当に大切なデータはクラウドに保管していても大丈夫ですか?」
このような質問をよくされる。ASPからクラウド全盛までの期間、
世界では「Gmail」を筆頭に、「Evernote」、
「DropBox」などビジネスの現場にも浸透するクラウドツールが
数多く登場している。これらツールを提供する企業たちは米国において
株式上場しており、クラウド全体の信用を高めたともいえるだろう。
オンライン上にデータを保管する抵抗感はずいぶんと小さくなっている。
とはいえ、不安がまったくなくなったわけではない。
オンラインストレージサービスでパスワードやIDが不正使用され、
画像データなどが漏えいした事故は記憶に新しい。


かつて、ASPが日本に上陸した頃、多くの日本企業は
「信用できない」と漏らしていた。なにが信用できないのか?
例えば、大切なデータをASPに預けることが信用できないのだろうか?
これも少しニュアンスが異なると思う。要はオンライン上に保管される
状況を受け入れ難かったという背景があるのだろう。
判りやすくいうと、大切なデータが倉庫に保管されていると聞けば
経営者はなんとなく安心できる。それは、倉庫という目に見えて
実在する場所に確実に保管されているというリアルな手触りがあるからだ。
これぞアナログ的な信頼感である。しかし、オンライン上に
保管されていると聞くと、まずこう考える。
「オンラインってどこにあるのか?安全なのか?漏れないのか?」と。
データが重要であればあるほどバーチャル空間に保管しておこうと
いう気にはなれなかった。


しかし、前述したように、日本も米国もクラウドサービス提供会社が
株式上場しているケースが増えた。つまり、信頼感はかつてと比べて
グッと高まっていることも事実。当然、設立したばかりの
ベンチャー企業が提供するサービスを選択するのも自由だ。
しかし、相対的な信頼度が落ちることは間違いない。


このあたりの信頼度を無視して、コスト削減と利便性の双方を
声高に叫ぶ論調が多い。
リスクがゼロになることはない。企業の経営情報を保管した
クラウドサービスが一瞬にして消滅すれば、極論すると
倒産リスクもともなう。もちろん、中小企業の場合、そのリスクは
より増すことは理解できるだろう。


怖がってばかりもいられない。
ICTを賢く使い、勝ち抜く企業へと変革を進めるならば
クラウドサービスを使わない手はない。
しかし、このリスクを常に考慮しておかなくてはならない。
すべてが危ないのではなく、使う側の準備と対策次第である。
では、本当に大切なデータはどうするのか?
残念ながら、そこに明確な解はない。
失うことが許されないデータは、やはり金庫に置き、
自分の手元で管理すべきなのだろう。
どんなにオンライン技術が進化しても、その部分はアナログ的対策との
掛けあわせが求められる。
繰り返すが、すべてをクラウドが解決してくれるものではないと
認識すべきなのである。クラウドサービスは道具に過ぎないのだから。

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(近藤 昇 著 2015年9月30日発刊
ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する
  第6章 アナログとICTの境界にリスクあり-ところでクラウドは信用できるのか より転載)