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【第8章】書籍からコンテンツビジネスへ


書籍と聞くと小説などを思い浮かべる方も多いかもしれない。
しかし、書籍はビジネスの場で大変役立つ。
ブランディングのツールでもあり、営業ツールにもなる。
当社も過去からずいぶんと活用させていただいた。
2004年には出版社(カナリアコミュニケーションズ)を立ちあげ、
グループ会社の一員とした。その出版社の創業時の社名は
「カナリア書房」。いかにも出版社という社名である。
その社名を2013年に「カナリアコミュニケーションズ」と変更した。
その背景には出版ビジネスからコンテンツビジネスへと
シフトする時代の潮流があったためである。


20世紀までの出版ビジネスはある意味シンプルだった。
書籍を制作し、それを書店で販売するビジネスがすべてだった。
アニメや漫画などのキャラクタービジネスで大きな利益を手にする
出版社もいたが、ほとんどの出版社が書籍こそが中心となり、
ビジネスモデルを形成していた。


21世紀を迎えると、人間と情報の関わりに大きな変化が訪れた。
インターネットの登場により、ウェブが新たなメディアの舞台となったのだ。
そこに、動画や音声、さらに、SNSが登場し、ウェブを中心とした
電子コンテンツが主役になりつつある。
同時に、出版社と書店の存在が希薄になる。それもそのはずである。
従来、コンテンツをつくりあげることが出版社を含めたマスコミの
専売特許だった。しかし、現在、コンテンツは誰もがつくることができ、
自由に発信する場もある。


このような時代に、出版社が書籍だけをつくり続けるとどうなるか?
これこそ、時代の変化に取り残されるだけであろう。出版社のビジネ
スにパラダイムシフトが起こっているのだ。出版社は、書籍という
物理的なデバイスへのこだわりを捨てて、よりコンテンツそのものと
向き合わなければならない。コンテンツのつくり手へとシフトしたときに、
今までにない新たな選択肢が生まれてくる。
それが、電子書籍、動画、音声、書籍というデバイスなのだ。


ならば、紙の書籍は滅びる運命なのか?
このような二極論を展開したがる方々も多い。
すでに説明したとおり、紙の書籍はこの世からなくなることはない。
コンテンツは無形であり、そのコンテンツを形あるものへと変化させれば、
書籍にもなり、映像にもなり、ブログにもなる。
肝心なことは「コンテンツ」にあるわけであり、それを書籍だけに
変化させてきたのが、旧来の出版社なのだ。


当社は、近年、この「コンテンツ」づくりに注力してきた。
みずからの経験やノウハウ、知見を集約し、それを書籍や映像、
ウェブコンテンツなどのデバイスを選択し、発信を続けている。
多くの失敗を重ねながら、着実に手ごたえをつかみはじめている。
大切なのは、書籍という有形の物質ではなく、「コンテンツ」という
無形でありながら変幻自在の存在にあるのだ。


カナリア書房のカナリアコミュニケーションズへの社名変更は、
コンテンツビジネスへのシフトを宣言したかったからである。
1人の著者から生まれるコンテンツをさまざまな形へと変えて、
ユーザーとコミュニケーションをはかる。
これからの企業の情報発信も、画一的ではなく、柔軟な思考が必要である。
だからこそ、私たちは「コンテンツづくりからはじめませんか?」と
皆さんに説く。自社の経験、ノウハウ、知見を定期的に集約し、
まとめておくことはなによりも大切なことなのだ。

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(近藤 昇 著 2015年9月30日発刊
ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する
第8章 中小のアナログ力が際立つ時代の到来-書籍からコンテンツビジネスへ より転載)