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BRAIN NAVI23号 近藤昇コラム「「知的なGIVER」で新興国でビジネスを」

第23回 「知的なGIVER」で新興国でビジネスを

3月15日~3月18日にかけてベトナム・ホーチミン市とバリアブンタウ省に
日本からのビジネス関係者が数多く渡越されました。来られた方々の目的は
それぞれ異なりますが、成長する新興国の空気を十二分に体感していただいたのでは
ないかと思っています。
3月16日には「第55回アジアビジネスカンファレンス」をホーチミン市・REX HOTEL
にて開催させていただきました。100名を超えるベトナム人・日本人参加者に
集まっていただきましたが、まさにベトナムと日本のビジネスの進展を象徴するような
イベントが開催できたと思っています。

アジアビジネスカンファレンスのメイン講師として登壇いただいたのは
株式会社ナベショー・渡邊会長。今までの経験から培われた経営思想を含蓄ある言葉で
ベトナム人の皆さまに伝えていただきました。株式会社アイコーの相場社長に
おかれましても、今後ベトナムで展開する事業展開をわかりやすく説明して
いただきました。

新興国という言葉を聞いて日本人の皆さんがイメージすることは「不便」「リスク」と
いったネガティブワードが多いようです。確かに新興国や途上国はインフラも未整備な
上、ビジネスにおけるリスクも数多く潜みます。しかし、その一方で新興国だからこそ
日本とは比較にならない程のスピードで物事が進むことが実感できることも少なく
ありません。その好例がICTです。日本はAIが話題となり、ICTバブルの様相を
呈しています。しかし、日本においてICTやAIで本当のイノベーションは起こる
とは思えません。イノベーションは社会変革の要請に基づき勃興してくるものだと
確信しています。だからこそ、国土が狭く、交通インフラの発達した日本において
ドローンの活用を議論したところで、イノベーション的な発想は生まれてきません。
そこに不便さの克服や貧困の脱却などの社会的テーマが結びついて初めて
イノベーションは大輪の花を咲かせるのではないでしょうか。そういう意味で考えれば、
新興国における技術進化のスピードは速い。それはテクノロジーを利用し、
イノベーションを起こすことが社会的テーマの解決に直結するからでしょう。
私がこの10年間、セミナーの場で必ず使わせていただく図があります。それは
水牛の写真とスマートフォンを対比させた図です。「水牛が道路の真ん中に
寝そべっているようなところで、スマートフォンなど普及するわけがない」という
先進国の凝り固まった常識を覆そうと古くから使用してきました。今では、
多くの方々に頷いてもらえるくらい当たり前の事象として受け入れられています。

このような新興国でのビジネスに対して、日本人としてどのようなスタンスで
立ち向かうべきなのでしょうか? その羅針盤としてピッタリな書籍を
見つけましたので、皆さまにも紹介したいと思います。

GIVE & TAKE 『与える人』こそ成功する時代」(三笠書房)
著:アダム・グラント 訳:楠木 建

本書では心理学者である著者がビジネスにおける人間の行動パターンを「ギバー」
「テイカー」「マッチャー」の3種に大別しています。「ギバー」は自身の
利益以上のものを相手に与えようと行動するタイプです。「テイカー」は
自身の利益優先で行動するタイプ。「マッチャー」は「ギバー」と「テイカー」の
バランスをとり、損得計算をしながら動くタイプです。
世間的に見れば、3つのタイプとして「ギバー」を目指したいのは当然だと思います。
しかし、何も考えずに「ギバー」を続けてしまえば単なるお人好しに過ぎません。
特にビジネスの世界では。だからこそ、ビジネスにおいては知的な「ギバー」を
目指していくことが大切だと本書を読了した際の私の実感です。

新興国のビジネスにおいて日本は経験もノウハウも常に優位に立ちます。
しかし、私たちが20年間活動しているベトナムにおいても、日本人が
「テイカー」として行動している姿をよく目にします。
「自分たちの利益、自分たちの繁栄」をビジネスにおいて真っ先に考えてしまう
のは理解もできます。しかし、先進国である日本が成すべき姿は「ギバー」
なのではないでしょうか。現地の方々の利益をまず考えてみる、現地の
方々の欲するものをまず考えてみる。これからの新興国のビジネスは
現地企業や現地の方々との二人三脚が不可欠です。まず、相手の利益や
メリットを考えた行動を優先させれば、自然とそれ以上のメリットを
いずれ享受できると思うのです。

ぜひ、皆さんともそんなスタンスで東南アジアやアフリカを
駆け巡っていきたいと考えています。