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【第3章】地方と海外と在宅がつながる時代


少子高齢化が加速度的に進む中、地方は過疎化が進み、
深刻な状況にある。地方経済が疲弊し、都市部への労働人口集中が進む。
そして、ますます地方の過疎化に拍車がかかる。
このような悪循環を生み続けてきている。
しかし、ICT活用によりその状況を打開することができる可能性がある。
例えば、徳島県の神山町のような取り組みもある。
徳島県は、知事のリーダーシップのもと、積極的に情報通信環境を整え、
神山町という限界集落でICT企業の誘致に成功しているのだ。
この取り組みは、他の自治体も注目している。


東京のITサービス会社が徳島県の古民家を借上げて、
事務所兼社宅にし、仕事を進めている様子がマスメディアで
取りあげられたこともある。
東京の洗練されたオフィス街で仕事をするよりも、
緑豊かな自然に囲まれた中で仕事をする。共同生活の中で
社員同士の一体感も生まれているという。


同じ徳島県に、葉っぱビジネスで町が生き返った例がある。
人口わずか2000人で高齢者比率47%、総面積の約90%が山林の
小さな町、徳島県上かみ勝かつ町ちょうだ。
そこでは、料亭や寿司屋で、飾りとして使われる「つまもの」の
葉っぱを採取し、出荷する葉っぱビジネスで全国シェアは8割を占めるほどの
躍進を見せている。葉っぱの出荷農家は190世帯で平均年齢は70歳。
主力はおばあちゃんたちで、誰もが防災用の無線を利用したFAX、高齢者用に
工夫されたPC、農協への連絡用の携帯電話を使いこなしている。


このようにICTを有効に活用できれば、地方にいながらでも
ビジネスに関わり続けることができる。
インターネットさえあれば、テレビ会議ができる。
商談もできれば、関係者同士の会議もできる。
都市部にわざわざ移転しなくても地方でテレワークで
業務を遂行することも可能だ。
そして、日本国内だけでなく海外とのビジネスも可能になる。


私は、常々地方こそ海外ビジネスを積極的に行うべきだと
言い続けてきた。
どの地方も経済活性化のために、国内市場だけで戦おうとする。
地方同士で、限られたパイを奪いあっているだけに過ぎない。
レッド・オーシャン(競争の激しい既存市場)の中で戦うよりも、
成長著しい東南アジアにも目を向けるべきである。
彼らは、日本企業が進出することを望んでもいる。
そこにはまだ誰も気づいていないブルー・オーシャン(競争のない未開拓市場)が
見つかるかもしれない。


よく、国内の地方都市が東南アジアの首都圏、
例えば、ベトナムのハノイやホーチミン、タイのバンコクなどと
連携しようとするが、それは釣り合いがとれない。
東南アジアの首都圏は未来の東京と呼ばれるくらいの勢いで
急成長している都市だ。
それよりも、東南アジアの地方都市と連携をはかるほうがより効果的だ。
地方同士だから親和性は高い。農業であれば、六次化を促進し、
海外の地方都市からインバウンドを推進する。
国内の地方と海外の地方との距離をICTで縮めることも可能だ。

当社はすでに述べてきたように、テレビ会議システムを最大限活用している。
国内にいながら、ベトナム企業との商談もするし、
セミナーも人材採用もこなしている。
地方で家にいながら、海外とオンラインでつながる。
そこに、地方が今後目指すべき姿がある。
ぜひ、このことを地方の方々は考えてもらいたい。

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(近藤 昇 著 2015年9月30日発刊
ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する
 第3章 パソコンもオフィスも不要な時代-地方と海外と在宅がつながる時代 より転載)