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【第4章】ITリテラシー教育の本質は何か


ICTの活用を進める上で、必要になるのがITリテラシー教育である。
このITリテラシーとは、PC操作やExcel、Wordの操作に
習熟するということだけではない。


私はセミナーや研修で、ICTのリスクを包丁にたとえて説明する。
包丁は便利な道具だ。野菜を切ったり、肉を切ったりする料理の必需品だ。
しかし、一歩使い方を間違えば、人を死傷させる凶器にもなりうるのだ。


最近は、小学生が携帯やスマートフォンでゲームに興じている姿を
見かけることも珍しくない。インターネットを利用することもあるだろう。
しかし、ICTを見様見真似で、使いこなしている姿を見るにつけ、
この子どもたちが将来問題を起こしてしまわないかと危惧する。
人間形成がきちんとできず、しかもITリテラシー教育も受けずに
機器や端末、ネットに触れているのだ。


悪ふざけや目立ちたい一心でコンビニ内で威力業務妨害まがいの
悪戯をして、YouTubeにアップする学生や子どもが後を絶たない。
SNSで誹謗中傷によるトラブルを招くこともある。
SNSをよくわからずに利用して、個人情報を拡散してしまうという
トラブルも起こしかねない。


このような状況を見るにつけ、私自身は幼少の頃からの
ITリテラシー教育が必要だと考えている。
小学校でいきなり、タブレットを使った授業をするよりも、
ICTの便利さと同時に使い方を間違えると人を傷つける凶器にも
なりうるということを教えることの方が先決だ。


こういう問題意識に駆られ、
マンガでわかる!親子のためのインターネット& ケータイの使い方
(2005 年10月・カナリア書房)を今から10年前に発刊した。


そこで、ICTに関するモラル教育の必要性を説明している。
子供のICTは、自転車に乗るのと同じように考えるべきだ。
最初は、補助輪をつけて自転車に乗る練習をする。
やがて、自転車に慣れると補助輪を外し、自走するのと同様に、
ICT利用についてもステップ・バイ・ステップで進めるのだ。
最初は、使用時間や使用機能を制限していくことが必要だ。


インターネットの心理学』(2001年9月・NTT出版)
という書籍がある。本書では、インターネットの世界が
人間行動に及ぼす心理的な影響について説明されている。
本書によれば、心理学的にはインターネット世界では、
人は奇妙な行動をとったり、普通とは異なる人間関係を
築くことがある。また、正常な人がささいなことで
冷静さを失うこと、熱い論争に巻き込まれ相手を不必要に
厳しく非難したり、他者とのやりとりにおいて、
まったく抑制のきかない状態に陥ったり、激昂しやすいとある。
本書以外でも、インターネットやゲームにより攻撃性が高くなるなど、
心理学的見地からの研究が数多くされている。
いずれにしてもトラブルが起こってからでは遅い。
女子高生のSNS利用時間は1日7時間にのぼるとの
調査データがある。デジタルネイティブ世代といえども、
さすがにこれだけの時間、SNSをし続けると疲れるだろう。
ついに、SNSのつながりから離れようとする動きもあるようだ。


東南アジアの国では、日本の躾や道徳を学びたいとの声を多く聞く。
そんな声を聞くにつれ、本当に日本で子供の躾や道徳を
やり直すべきではないかと思ってしまう。
人間形成が大切な子供の頃に躾や道徳、それらにマッチした
アナログ力をベースにした本質的なITリテラシー教育を行うように
社会がもっと関心を持ってもらいたいものだ。

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(近藤 昇 著 2015年9月30日発刊
ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する
 第4章 今どきのICT活用の実際-ITリテラシー教育の本質は何か より転載)