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商売の原点は不便さの中にある!

日本は便利過ぎる社会という実感はあるだろうか?

社会が、便利になりすぎると、ふと、不便が心地よかったりする。
ベトナムと日本でビジネスをしていて最近よく考える。
私は今年で46歳になった。
農村で生まれ育ったせいか、今の都会っ子から見たら、極めて不便な場所で
20年近く過ごした。

特に、小学生ぐらいまでは、街灯もなく、バスも通らない
「ど」のつく田舎に住んでいたのだ。

大学生の時、神戸に出てきて、
正直、カルチャーショクを受けたのを昨日のように思い出す。

電車やホームの群集、高層ビルなどなど、何を見ても衝撃的な初体験ばかりであった。

そんな時代を経験しているせいか、今の日本は「とにかく便利すぎる」とつくづく思う。

いまどき、就職活動をする学生は、おおむね日本で20年間暮らしていることになる。
この20年間といえば、日本は既にそれなりに便利な社会になっていた時代である。

20年前から電車も存在したし、エレベータ、エスカレータは当たり前。
新幹線も走っていた。
つまり、本当の“不便”など知らない人が大半であろう。
さて、一方のベトナムはというと、エレベータは一般化されつつあるが、
エスカレータは、高級百貨店などにしか存在しない。
電車は、ようやく開発計画から実行段階へ移りつつある時期であり、
新幹線などは計画されているが、その実現には10年以上かかるといわれている。

 

いまや日本は、これでもかというほど、便利さを追い求めている。
要するに人間が楽に生活できるようにと次から次へとさまざまな便利な仕組みが登場し続けている。

ICカード一枚で何でもできたり、
もう数年もすれば、家事をするロボットが各家庭に登場するのだろうか・・・。

 

世界を見渡すとベトナム以上に、発展途上の国はまだまだ幾らでもある。

しかし、少なくともベトナムと日本を比べただけでも、多くのことを考えさせられる。
不便であっても、ベトナムの人々は、活き活きしているし、はつらつとしている。
“生きることに敏感”なのだと実感する。

交通手段ひとつとっても、バイクが主で、見た目は決して安全とはいえない。

3人乗りは当たり前、4人、5人乗りもたまにみかける。
その上、大渋滞、大混乱・・・。

移動手段が限られている中でのサバイバル。
自然、大人も子供も老若男女、機敏になりリスク感知能力が高まる。

 

かたや日本はどうだろうか。

ストレス社会と言われ続けて、とっくにもう10年は超えた。
衛生を求めすぎて、免疫力が低下し、運動不足といってジムにひたすら通う。

こんな、恵まれ過ぎた国で育って、生活していると、
世界の国々、特に、発展途上国で生活している人たちの方が
よほど幸せで人間らしい生活をしているのではと思ってしまう。

 


ビジネスをしている立場としては、さらに心配が増す。これで本当に日本人、特に若者は、大丈夫なのかと。

不便であれば、人間は工夫することを考える。
道を歩いていても、少々の危険を感じた方が生きること自体に敏感になれる。

ビジネスでも同じだ。不便な状態を少しでも改善するからこそ、ビジネスのアイデアも沸くし、その実現も楽しいのだ。


 

ビジネスの感性を磨くということは、生活の場においても刺激が必要だ。
既に便利すぎるということに気づいていない人たちが多いから、
ビジネスの方向性を間違えるのだと思う。
要するに、もうこれ以上することがないのに、
無理やりひねり出すビジネスを追いかけている気がしてならない。

少しでも今よりも便利になる。美味しいものを食べる。道が少しでも舗装される。
発想はとてもシンプルだ。

こういった不便な環境において、日本の経営者やビジネスパーソンは再認識したいものだ。

『商売の原点は、不便さの中から見つけることにある』と、つくづく思う。

 

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