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【第1章】経営環境が本当にICTで変わりだした


図1-2に示すとおり、経営環境が劇的に変化し続けている。
少子化による人口減少や地方の過疎化、労働者の高齢化が
予想をはるかに上まわる勢いで進行中だ。
それにともない、国内市場は縮小し、さらに顧客が様変わりしている。
ひとつは、子どもの頃からインターネットやPCのある生活環境の中で
育ってきたデジタルネイティブ世代の登場である。
もうひとつは、好奇心旺盛なアクティブシニア世代の増加だ。


また、情報化社会になり、多くの情報が氾濫している。
顧客は、口コミサイトを情報収集の場として活用している。
口コミがオープンになり、公然とインターネット上で開示されるの
だから企業側は大変である。


さらには、アジア諸国が目覚しい経済成長を遂げている。

 


中小企業といえども競争の激しい国内市場だけで戦うよりも、
ブルー・オーシャン(競争のない未開拓市場)を目指し、
海外進出を視野に入れなければならない時代だ。
国内市場の縮小対策として、政府が打ち出した成長戦略の柱のひとつ。
それは海外観光客の誘致(インバウンド)である。政府は観光立国を
目指し、特に経済成長を遂げたアジア諸国からのインバウンドに力を
入れている。その結果、実に多くのアジア人が日本に訪れている。
観光局の発表によれば、2014年1341万人の外国人が来日し、
史上最高を記録したが2015年はさらに勢いを増しており、
1900万人を超えると予想されている。政府は2020年までに、
訪日客を2000万人に増やす計画を掲げているが、
前倒しで達成されることは間違いないだろう。


他方、労働力不足解消のための外国人研修生の受け入れも
活発化している。特に2020年東京オリンピック開催が決定し、
オリンピック特需に沸く建設業では外国人研修生の数が
急速な勢いで伸びている。


このように経営環境が激変するのと重なるように、
ICT環境も通信技術の急速な進歩で大きく変貌を遂げた。
いまやスマートフォン、タブレットの利用はごく当たり前だ。
自動車にカーナビを装着すれば、行きたいところまで誘導してくれる。
カーナビがなくとも、スマートフォンの地図アプリで、
目的地まで案内してくれる。ETCを装着すれば、高速道路の
料金決済がカードで行われる。
街のあらゆるところで、インターネットを利用し、世界中と結ばれている。


このように、ICTは生活や社会インフラにも深く浸透しており、
当然、企業にも大きな影響をおよぼしている。
例えば、企業ブランディングが一例だ。いまや自社の
ウェブサイトを立ちあげるのは当たり前。インターネット上で
広く自社のことや商品、サービスを知ってもらおうと、
ほとんどの企業がウェブサイトを構築している。
海外の顧客がEC(イー・コマース)サイト上で、
商品を購入するし、海外からの観光客がウェブサイトを
利用して宿泊予約する。こういったことが、
当たり前に行われている。


ICTを使った新たなプラットフォームビジネスも生まれ、
そこでは利用者の激しい囲い込みが展開されている。
このあたりの詳細は後述したい。


インターネットを利用すれば、物理的な距離感が一気に
縮まる。しかも低コストで距離感を埋められる。
実はこのことが、革新的なイノベーションの原動力になる。
その典型が、テレビ会議システムだ。当社は18年前から
ベトナムに拠点を構えているが、他の中小企業に先駆けて
テレビ会議システムを導入した。日本とベトナムもテレビ会議で、
日々顔を突き合わせながら会議をしている。


採用説明会やセミナーもテレビ会議上で行っている。


セミナーについては、ホーチミンからベトナム人講師が登壇し、
ハノイにいる通訳者が日本語に通訳、それを日本の聴講者が
聞くといったことを頻繁に行っている。


テレビ会議システムの導入で出張コストの削減を実現できるだけ
でなく、ビジネスの可能性も大きく広がる。
そして、何よりもスピーディーな判断や決断を後押ししてくれる。
スピードが求められる時代だからこそ、メールの無機質な文章
だけに頼って、判断を間違えるわけにはいかない。
相手の顔や様子を見て物事を判断することがより重要になっている。


中小企業といえども海外進出を視野に入れなければならない時代だ。
経営環境やICT環境の変化、ICTによるビジネスモデルの
変化などを理解した上で、企業経営について改めて考えてもらいたい。

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(近藤 昇『ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する
 第1章ICTに振りまわされ続ける経営者-経営環境が本当にICTで変わりだした より転載)