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アジア人材の活用には信念と根気が必要

人材活用はいつの時代もどこの国でも企業経営の重要課題のひとつである。

私も23年間の企業経営の中で何に一番エネルギーを注いできたかといえば、

迷わず「人材育成」と答える。苦労したいわけではないが、結果として苦労する。

これが正直な感想だ。

弊社の場合、創業期から日本人の活用だけではなくアジア人の活用を前提にしてきた。

アジア人材活用のススメ

今から振り返ると創業時の私のスキルは経営どころか社員のマネジメントスキルも

たいしたものではなかったが、この人材育成には自信を持っていた。

自信というよりも好きなのだ。

そういう表現が正しいかもしれない。

今にしてみれば、どこにそんな根拠があったんだろうかと思い返すと

恥ずかしくなるぐらいのレベルだったわけで、なにも実績に裏打ちされていたわけではない。

創業してから3年目ぐらいの時日本人の社員数は30人ぐらい。

それが、5年後には100人近くになっていた。

未経験者を中心に募集し、ITエンジニアとして育てながら仕事してきた。

時流にも乗って業容は急拡大した。

この当時のプログラマーは世間では挨拶ができなくてもパソコンに向かっているだけで

「良し」とされていた時代であり、現代では考えられなかった。

当時から私はIT業界もサービス業になるべきとの信念で経営をしていたつもりである。

ところが実態には大きなギャップがあった。

とてもサービス業といえない社員のビジネスマナーや勤務態度。

「このままではまずい・・・」と痛感し、徹底的な社員教育を始めた。

今でも人材について考える度に思い出す。

こう書けば少し聞こえはいいが、実態は本当に酷かった。

その時の流行のフレックスタイムも採用していた。

弊社が借りていたオフィスビルの玄関先の道路わきに、ある日を境に見る見るうちに

煙草の吸い殻が山盛りになっていく。

なんのことかと思いきや、自分のところの社員がやらかしていたことが判明。

恥ずかしさと情けなさで、怒りを爆発させ、社員を集めて怒鳴りちらした。

いくらITの仕事ができても、こんな行為や態度は私としては許容できなかった。

とはいえ、私の社員教育、躾がなっていなかった訳で、私も意を決して徹底的な

社員教育をやり直すことにした。

もちろん、その結果、去っていった社員もたくさんいる。

それでも信念を変えることはなかった。

今からすれば、弊社の経営のスタンスはここで定まったと思っている。

 

弊社が海外でビジネスを始めて20年を超えた。

日本企業がアジアなどの近隣諸国への進出が当たり前の時代になった。

創業時は想像すらできなかったように時代は激変している。

すでに海外に進出した企業にとってはいうまでもなく、

これから海外に出ていく会社にとっても、経営者の一番の関心ごとはやはり、

現地の人材をどうやって上手に戦力化できるかだ。

いわゆるローカライズ化の話である。

かつて、米国が日本に進出してきたときとかぶる。

弊社は十数年以上前から自社の経験を活かして、海外進出の際の人材採用、

育成やマネジメントの相談も数多く受けてきたが、最近特にアジア人材に関するものが

急増している。

今のベトナムでは日本企業の進出ラッシュとあわせ、日本語ができるベトナム人材が

争奪戦の様相を見せている。

必然的に彼らの報酬もどんどん高くなる。

どの経営者にとっても正直に言えば、人材育成は投資であるが、

報酬が安ければ、まだ気が楽だ。

誤解してはいけないが、報酬が日本に比べて安いからといって、

マネジメントを適当にして良いという意味ではない。

どこの国でも1人は1人。

情熱と責任をもって人材育成するという意味では同じエネルギーが必要だ。

ただ、経営の視点からいえば、人はコストでもある。

日本と比べて物価水準が低い国は人件費が低廉だ。

日本企業にとってアドバンテージになるのも歴然とした事実である。

新卒に限らず中途も人材採用と人材育成は投資であり、

特に新卒はすぐに戦力にはならない。

この観点でいえば、アジア人材活用の成功のポイントは、

そもそも、中長期的に根気よくじっくり育てるのが一番の近道ということになる。

 

弊社がベトナムに進出したばかりの頃、日系の現地法人の社長からいわれたことを

今でも鮮明に覚えている。

その彼は、私に好意的に言ってくれたと今も思っているが、人材教育ビジネスに

取り組む私の話を受けて

「ベトナム人の人材教育は砂漠に水をまくようなもんだよ」

とアドバスをくれた。

普通だったら諦める人も多いと思う。私は、そう言われるとやりたくなる性分である。

その後、ベトナム現地の有力企業と意気投合し、ITのエンジニア育成学校を設立した。

半々の資本で現地ライセンスの学校を運営することになった。

 

 

 
3年間で300人ほどのベトナム人を育成して、そのうちの100人ぐらいは日本で

働くことになった。

日本企業としては初めてのことで、計画としては、500人~1000人の卒業生を

目指していたが、リーマンショックなどが重なり、日本市場が一気に冷え込んだ。

それにあわせ、アジアのITエンジニア需要はアッという間に縮小していった。

それまで中国人が大半で、これからはベトナムが・・・という時に一時のブームは去ったのだ。

 

弊社も実は、中国とのかかわりでITエンジニア人材の活用が始まった。

中国はベトナムに比べて少なくとも10年は先行していた。

私は20代のころ、神戸のとあるIT人材派遣会社に2年間所属したことがあり、

ここで初めて中国人やマレーシア人のエンジニアと仕事した。

これがきっかけで、私はアジアに自然と目が向くようになった。

弊社を創業してしばらくして、私は上海に飛び、日本語がまったく話せない

中国人ITエンジニアの卵を神戸のオフィスに10人雇用して連れて来た。

日本語ができる人を探すのが困難だったからである。

自分自身のチャレンジ精神だけは、今振り返っても我ながら感心する。

冒頭で述べたように、社員教育への意気込みは強かったが、やり方が未熟であった。

そのため、半年後に中国人エンジニア達は皆いなくなった。

日本語がそれなりにできるようになったころに彼らは他社に転職していったのである。

今でもよく聞かれるが、中国人よりベトナム人の方が組織に対してロイヤリティーがある・・・と。

私の答えは昔も今も変わらない。

中国人で痛い目に遭って、それでもめげずベトナム人の教育に本気で取り組み、

現時点での答えは『日本人以外みな一緒』である。

中国人もベトナム人もすぐにジョブホッピングする。他の国でもそうだ。

チームワークによる仕事は苦手である。

ホウ・レン・ソウや期限厳守を口うるさくいうと嫌になってやめてしまう。

会社を気に入ってもらい、じっくりと育てていきたい日本の経営者。

自分にとって良い条件、マッチする職種を求めて転職を繰り返すアジア人。

根本的に前提が違う。

とはいえ、今の日本人もすぐに会社を辞める傾向は変わりないが・・・。

 

最近は、アジア人を日本でじっくり育てて将来の現地法人の責任者へという狙いで

日本に連れてくるケースも増えている。

特に将来を託すには日本での生活体験も必須だ。

日本人の異常なまでのこだわりにより、こんなにも美しく便利な国になっていることが

体験できることも大きい。

経営者にとって現地であろうと日本であろうと、教育している途中に辞められたらダメージは大きい。

コスト面だけではなく心情的にもそうだ。

大きな単位でドライに考える大企業ならいざ知らず、中小企業は小さいトライでしかもウエットだ。

中小企業が一度失敗すると、なかなか継続して次の人材を見つけて育成をとはなりにくい。

弊社は、6年前からベトナムで小売店やレストランを運営している。

サービス業の人材育成についても、ノウハウの更なる蓄積を図ってきた。

 

  
しかしながら、人材教育をやればやるほど、その難しさと奥深さに気づかされる。

結局、人材育成とはこちらの望む通りの結果にはなかなかなりにくい。

日本もアジア諸国も同じである。

しかし、やっててよかったとも思える。

そのひとつは、教える側が成長できることだ。

それと、今のベトナムがそうだが、教えた人材が自分の会社にはすでにいなくても、

その国では活躍していることである。
先日、アフリカのルワンダに現地法人を設立した。

今、私達はルワンダ人に限らずアフリカ人の活用を視野に入れている。

ICT立国の同国で、長年の経験を活かし、ICTエンジニアの育成に取り組む計画である。

それと並行して、弊社の日本勤務で採用したり、弊社のクライアントに紹介していこうと思っている。

中国やベトナムなどの経験を活かしつつ、根気よくアフリカ人材の育成に取り組んでいきたい。

 

 

  

  
日本が世界に貢献できることのひとつとしてとても重要な分野である。

まずはその第一歩として、再度、自社の人材育成をやり直す考えである。

 

 

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