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これからは、日本でもアジアでも農業が主役の時代

今、日本はTPPの話題で持ち切りだ。
TPPは農業に限ったことではないが、
今のメディアから受け取る印象ではTPPはほぼ農業問題一色だ。
例えば多くのメディアからはどうしてもそう感じてしまう。

私自身は、これはこれでよいと思っている。
評論家は不満かもしれないが、
そもそも、今の日本人を総じて見た場合、
農業に関心を持って暮らしているとは思えない。
TPPは、農業と利害関係がある政治家や経営者、
あるいは当事者の農家にとっては相当ナーバスな問題だ。

ここ数ヶ月、TPPの賛否に関する意見表明や報道がされている。
反対するには、それなりの立場、思惑があるし、賛成する側も同様だ。
いずれにしても、TPPをきっかけに日本の農業に日本人が
もっと関心を持って、“自分事”と考えられるようになって欲しいものだ。

ちなみに、私はTPPの参加に基本的に賛成だ。
アジア全体の将来を考えた場合、関税がなくなる方向が自然だと思うからだ。
ヨーロッパなどのようには、簡単には進まないとしても、
近隣する地域で経済が一体化する方向であるのは、実感としても疑う余地はない。
世の中の仕組みや国同士の貿易などは常に変化していく。
自然とあるべき姿に適応していくのが一番良いと考えている。

先にも述べたが、TPPは、農業に限ったことではない。
とはいえ、今回の議論の中心は農業であることは間違いない。
ただでさえ、農業従事者の減少などで、窮地に立たされていたのが
日本の農業、農家である。
そこへ、関税が撤廃され外国からライバル商品が山のように流入する。
弱り目に祟り目といえよう。

では、この難解な課題に対して、一体これからどのような打開策があるのか?
端的にいうと、私は他の産業と同じようにアジアがひとつのキーワードだと確信している。
ある意味、日本の中で数多くの保護政策、支援などに
守られてきた農業は脆弱だ。
もちろん例外もあるだろうが。

強くなるためには、自立する産業としての変革も必要となる。
単なる農家からプロの農家への変革。
単なる家内業からビジネスへの変革。
これは、農業に携わる人たちだけの努力だけでは、成しえないことである。
官も民も連携することにより初めて実現するものだ。
日本の消費者も共にこの大改革に関与していく必要に迫られている。

考えてみたら、先進国の日本は、工業化、経済成長を急ぎ、
全精力を注ぎすぎた感がある。
その結果、国の存亡にもかかわる最も大切な農業を犠牲にしてしまった
といっても過言ではない。
政府や行政は、必然的に農業・農家の支援は継続的に行ってきた。
しかし、現実問題として農業はビジネスとして見ても、
魅力的な産業ではなく、一部の例外を除き、
魅力的な報酬を得て、やり甲斐を感じる仕事とは言い難い状況だ。

一方で、アジアでの農業ビジネスには大きな可能性がある。
しかし、その中でとりわけ大切なことがある。
それは、農業の関係者が主役になるということだ。
“農家が主役”になるべきなのだ。

 

 

美味しくて安全で美しい野菜をつくるには、労力と手間とコストがかかる。
一方、消費者はそんな野菜を安価に求める。
すでにアンバランスな供給と需要のバランスなのである。
アジアなら、このバランスを均衡に保つことができる可能性が十分ある。
つまり、美味しくて安全で美しくてリーズナブルな価格。
もうひとつは、高コスト、高技術で作ったものはその価値のままの値段で販売する。
このあたりの詳細は、拙著「アジアで農業ビジネスチャンスをつかめ!」にも
述べさせていただいている。

さらに忘れてならないことがある。
それは、農業は自然を相手にするモノ作りであり、
地産地消ともいわれるように、その場所の風土、食生活や生活習慣とも
密接に絡んでいる。
そういう意味では、文化の一部でもある。
アジアで農業を実践することは、今、日本がオールジャパンでアジアに日本の良さを伝えないといけないという課題解決にも貢献できる。

最後に、アジアで農業ビジネスを実現させて、
農業を強くするストーリーを簡単に紹介したいと思う。
日本の技術、マネジメントに期待しているカンボジアの
農業経営者とタイアップする。
現地で土地を醸成し、農作物を作る。
そして、“ジャパンスタイル”の商品として販売する。
アジアだけでなく、日本にも販売する。
さらには、同じ農産物でも、日本国内産は、最上級品質として販売する。
こんなことが現実に実現している事例は数多くあるし、
今後は、産業全体でアジアでの連携が進むと考えている。

 

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