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アジアこそ、1次産業が超有望だ

今は、世界不況の真っ只中。

しかし、大きな視点で見れば、アジアの潮流はいささかも変化していないといえる。

いわゆる先進国に追いつけ、追い越せと新興国が経済発展に全精力を注ぎ込んでいる。

振り返ってみると、米国、日本をはじめとしたG7といわれる国々が先頭を切って工業化に力を入れ、さらには情報化社会へと世界を導いてきた。

当然、これらの国でその犠牲になってきたのが農業や漁業、林業などに代表される1次産業だ。

戦後まもなくは1次産業従事者が労働者の約半数を占めていた日本でも、今や1次産業は衰退の一途。
それに連れて、就労者人口も激減、高齢化、そして、低所得と今や3Kを代表する職種となってしまった。

ところがここ数年、世界人口が爆発的に増大し、中国やインドなどの潜在的な消費大国が躍進するにつれ、にわかに世界的な食糧危機が騒がれ始めた。

経済力にまかせて多くの食料を輸入に頼ってきた日本の将来も、たちまち暗雲立ち込めている。

最近では、農業問題がメディアで取り上げられることが多くなった。

では、新興国ではどうだろうか?

前回も取りあけたが、例えば、ベトナムは、工業化、経済先進国への仲間入りを目指して、躍進中だが、実態は1次産業がまだまだGDPの多くを占める。

隣国のカンボジア、ラオスは、さらにその割合が高くなる。

タイでも農業は主力産業だ。

この一帯地域をメコンエリアと呼ぶが、先にあげた先進国と同じように、経済の高度化が進む中で、同じように農業などの1次産業が衰退していくだろうか・・・。

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今回、コントン省に足を運んだことで、私の中でこのことへの答えがさらに明確になった気がする。

同省では、農業と観光業に力を入れて、経済発展の起爆剤にしたいと考えている。

政府関係者はじめ重鎮の方々の意志に迷いはない。

ベトナムの今後の経済発展の姿、恵まれた自然環境、メコンエリアでの地理的ロケーションなどを考えた場合、最適な選択だろうと実感する。

そして、豊富な労働者も沢山いて常により良い職を求めている。

少しでも良い生活がしたいと望むのは当然の権利だ。

また、どこの国も構図は似ているが、農民を保護することは、政治体制の維持、経済の発展には不可欠な施策だ。


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しかし、現在の農業の様を実際に見た限りでは、自力での発展を志向した場合、感覚的には10年やそこらで、農業ビジネスの基礎ができるとは思えない。

やはり、外資の力や外国の関わりが必要だろう。

もちろん、日本も有望な候補だと政府関係者や農業従事者は考えている。

輸出先としての期待値に限らず、生産技術や品質管理面でのサポートや資金面も含めたビジネス構築支援にも期待している。

私は、このあたりに日本が貢献できる道があると考えている。

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ただ、日本人が忘れてはならないことも同時に頭をよぎる。

例えば、コントン省で見た農業は日本の30~40年前の日本の農業によく似ている。

単純に比較して日本より相当遅れている。
しかし、この実感だけでは不十分だ。
日本のこの時代の農業といえば、規制も何もない無節操な時代に好き勝手に農薬をたっぷり使い出した時代だ。

私も農家の大切な労働力として子供時代を過ごしたので、農薬がどれだけ危険だったかを我が事のように思い出す。

近代化を急いだり、本格的に売れるものを作ろうとすれば、否応なしに、農家の選択として農薬を盛んに使い出す。

理由はいたって簡単だ。

その方が楽に“良いもの”が生産できるからだ。

すでにベトナムの野菜も、中国からなどの農薬で汚染されている部分も多いと、現地の人からよく耳にする。

昨年、別の仕事で有機肥料の工場を日本の専門家と視察に訪れたことがあるが、安全とは決していえない製造工程と担当者は話していた。

この肥料がベトナムの農家で普通に使われている。

ちなみに、ここでは牛糞の堆肥が使われていた。

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これらの問題は、工場が引き起こす環境汚染の問題ともよく似ている部分がある。

日本もかつては公害が社会問題であった。

成長を急ぐ過程では、日本も多くのものを犠牲にしてきたし、反省もしてきた。

そういう経験も踏まえて、ベトナムのような新興国の農業産業の発展をサポートするならば、失敗から学んだ知恵やノウハウを惜しまず伝授しかかわっていくべきだと思う。
消費者は誰しも、自然の中で栽培された安全な野菜は食べたいと思っている。

世界中の消費者の共通した想いでもある。

しかし、問題は誰がそれを作るか、という点だ。

インタビューに応じてくれた農夫に聞いてみた。

--有機野菜は作れますか?

「もちろん、あのビニールハウスであればね。でも、コストがかかる」
「買ってくれる人がいて、投資してくれる人がいればできるけどね」



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屈託なく話してくれた。

もっともな話だ。

逆の見方をすれば、すでに農薬はなんらかの形で使用しているということか・・・。
日本でも知られていることだが、有機野菜の栽培には相当なコストと労力がかかる。

生産者、消費者、農業先進国、農業後進国それぞれの立場でそれぞれの事情がある。

一筋縄でいかないだろうと思いつつも、なにか妙にこの分野で真剣勝負したくなった。

そんな複雑な思いでコントン省を後にした。



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