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人工知能(AI)は使えるのか。

10月10日の日本経済新聞朝刊に、日本IBMがワトソンの廉価版サービスの
提供を開始するとの記事があった。

ワトソンとは日本IBMのAI(人工知能)システムを指すが、以前は米国の
クイズ番組に出場して人間に勝利したことが話題で、かつては私もその
程度の認識しか持っていなかった。

 

しかしながら、新聞誌上でAIの話題を毎日のように見かけるようになってから、
ワトソンへの認識も改めざるを得なくなっている。

 

今年8月には、白血病の60代の女性患者の治療法をワトソンが見つけ出し、
退院するまで回復したという。

 

約2千万件の論文を学習したワトソンは、わずか10分程度で治療法を
導き出したのである。これが日本の出来事であるということに大きな関心を持った。

それだけ社会の一部になりつつあるAIであるが、今後はもっと加速度的に社会に
浸透してくると考えている。

 

冒頭の記事では、ワトソンが廉価版とはいえ2千万円はかかるので、中小企業を
はじめとして多くの企業にはすぐには導入は難しい話だが、

AIはワトソンだけではないし、何も自社で導入せずとも、クラウドでAIを借りる

ということはすでにできる。

 

だが、AIを借りると言っても、イメージが湧かないだろう。
AIはシステムを構成する一部分でしかないので、AIだけ借りても何もできない。
データベースソフトだけを借りるようなものである。
AIの種類にもよるが、活用には分析するデータを与えないといけないし、
判断基準を教えたり、分析内容を評価するなどして、

使えるAIに育てていかなければならない。
もちろん、システムの一部として組み込むことも必要である。

まだまだAIを手軽に使うにはハードルが高い。

 

そこで使えそうなのが、AIを活用したSaaSなどのクラウドサービスである。

営業支援システム(SFA)にも、AIを組み込んだものが登場している。
顧客の人間関係や過去の商談記録などからAIが自動的に次のアクションや
提案内容をアドバイスしてくれるものである。

 

何とも頭が良さそうで、営業成績が上がる気がする。
しかしそれは思い込みに過ぎないと、まず思った方が賢明かもしれない。

このような仕組みが有効に働くには、AIが適切に分析できるだけの情報が必要である。
それも情報の質がものを言う。

 

商談記録にしても、「○○さんと××について打ち合わせ。次回、△△を提案する。」
といった内容では、AIも大した分析ができない。
○○さんがどのような反応だったのか、○○さんが他に興味を示した

キーワードはないのか、他につながりのある人はいないか、××について

誰がどのような説明を行ったのか、などという情報が必要である。

 

こういった情報を収集して記録するには、まず営業担当者が上記のような情報が

重要である、という意識を持つ必要があり、営業商談で五感で感じて、社に持ち帰り、
組織に共有しないといけない。

もし今、社内に残っている営業記録が不十分と感じたなら、
AIを考える前に、営業記録の残し方の改善を考えたほうが良い。

 

だが、この類の話はかつてのIT化全盛の時にも同じように語られていた。
つまりは、ツールがいくら高性能になり新機能を持ったからといって、
使う側のスキルが上がっていなければ、いつまでも宝の持ち腐れである。
IT化、AI化が進めば進むほど、足元を見直すことが求められるのだろう。

ワトソンが白血病患者の治療法を見つけ出せたのは、覚え込ませている情報が論理が
明確な論文が多くあり、必要な情報が含まれており、ワトソンを使う側も
プロフェッショナルであったために成し得たものと考えている。
AIを導入したからといって、何かが勝手に良くなることはない。
AIを活用できるかどうかは使う側に委ねられており、今後も変わらないだろう。

~書籍の紹介~

〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則』 ケヴィン・ケリー著

 

 

著者のケヴィン・ケリー氏は、テクノロジーの到来は不可避であるが自分たちが
そのテクノロジーをポジティブなものにもネガティブなものにも変えることができる
と言っている。

楽に、便利な方に流されていくのは人間の性であるが、自ずと生まれたテクノロジーを
そのまま真に受けて良いのか。

 

便利そうだから、面白いからということだけでテクノロジーに追従することは早計であり、
もっと本質的にテクノロジーと向き合うことが求められていると、私は捉えた。
今後のテクノロジーの進化が分かりやすく分類して解説されており、理解が進む一冊である。 

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