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【第2章】海外とのビジネスで活用するICT


日本の企業は大も中も小も、ようやく一斉に海外進出に向けて
動き出してきた実感がある。
当社は創業時から海外でビジネス活動を行ってきた。そして同時に、
ICTサービスを企業に提供する会社として活動をはじめたので、
「海外ビジネスをすること=ICTを上手に使うこと」には
どこよりも先んじて、自然体で取り組んできたと思う。


進出当時のことを思い起こせば、中国でも韓国でも台湾でも
現地の経営者はいきなりアナログ的だった。
日本の国内だけでビジネスしている経営者は、
日本人がアジア各国の中では一番ウェットだと思っている。
だが、私はそうは思わない。日本人も確かにノミニケーションや
ゴルフなどでの信頼関係の構築は重要視する。
しかし、アジアの経営者はもっと濃い。


私が、韓国のベンチャー企業と日本の企業の橋渡しをしていた
約15年前ぐらいのことだ。
その頃の韓国は、日本より先行してブロードバンド化が進行していた。
ソウルに乗り込んでいきなりド肝を抜かれたことを今でも鮮明に覚えている。
合弁会社設立の話をしていたときのことである。
彼ら特有の、100%の事実を200%ぐらいにハッタリをかまされたからではない。
オンライン配信サービスの打ち合わせで何を話そうかと思案していると、
挨拶程度で打ち合わせは終わり。
初対面で「今日はまずは飲もうよ」といきなり言う。
結局、三次会までご丁寧にセッティングいただいた。
韓国のおもてなしだからそれは密度が濃い。
十分すぎるほど打ち解けた翌朝、これで商談もまとまったと
勝手に安心していると、予想外に事が進んだ。
その打ち合わせは、前日とは打って変わってとてもタフな交渉の場となったのである。
その頃の韓国のネットベンチャーは日本よりかなり進んでいた時期で、
彼らは自信満々だった。
強気なのはわかるが、昨日までのフレンドリーな対応はいったいどこへいったのか……。


そんな経験をしたあの頃から十数年が経った。
今は、ベトナムにどっぷりハマりながらも、東南アジアを見据えて、
建設や農業ビジネスなども推進している。
実はベトナムも韓国に負けず劣らずノミニケーションを大切にする。


アジアでいかにビジネスを推進するか?
長年考え続けてきたことだが、当社が創業時から主に
ご支援の対象にさせていただいているのは中小企業だ。
やはり、アナログ的でウェットな会社が多い。
経営者も叩きあげで人間味あふれる方が多い。
だから、ますます深入りしてしまう。


こんな中小企業もいまや海外を視野にするべき時代、
いや、視野にできる時代が来たといえよう。
大企業のように資金力もないし、人もいない。
とても中小企業では太刀打ちできないと思われている。
ボスである社長みずからが出張っていけば良いが、そんな余裕もない。
ボヤきと諦めのオンパレードだ。
ただそれでもパワフルな社長も少なからず存在する。
60歳を超えても、馬力があって、しかもその国が好きで何度も足を運ぶ社長もいる。


すでにアグレッシブに活動している社長も、尻込みしている社長も、
こんなチャンスの時代になんともったいないことと思う。
上手にICTを使えていない方々がなんと多いことか。
日本は、アジアを中心、例えば、ベトナムかタイあたりを中心に地図を見ると
すぐわかるが、とても辺境の場所にある。
近いということは親近感だけではなく、実際に商圏も一体化し、物流も生まれる。
そして、ビジネスのシナジーが生まれやすい。
そう考えると、日本はとても不利な場所にあるのである。


実は、当社は海外活動をはじめた頃から、こういうハンディを深く感じたことはない。
飛行機に乗っての移動は面倒に思うのは正直なところだ。
しかし、通常のビジネス活動は、海外にいることを意識せず、
日本国内と日常業務、重要会議、営業活動になんら支障はない。
いうまでもなく、ICTを自然に、上手に活用してきたからだ。
具体的には、電子メールやテレビ会議システムの活用である。
そして、ベースには情報共有化と活用化のためのしくみづくりだ。
今では、安価で安心なクラウドサービスまで登場しているし、
ますます快適になる一方であると実感している。


こんなことを述べると、中小企業の社長から怒られそうだ。
「バカを言うな。直接会って、仲良くならないで
どうやってビジネスがうまくいくんだ」と。
もちろん、私は今でも実践している。
直接会うときは、徹底的に飲んで遊んで、ゴルフもする。
そうすれば、一気に関係は深くなる。
仕事を進めるのは、遠隔地での会議や電子メールで充分こなせる。
要は使い分けと、メリハリなのだ。


今の日本の中小企業は一番中途半端なやり方をしていると感じる。
このままではICT活用時代の世界に取り残されていくのではないかと心配になる。

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(近藤 昇『ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する
 第2章 アナログとICTの両立を考える-海外とのビジネスで活用するICT より転載)