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【第5章】ノウハウをためるだけでは、宝の持ち腐れ


企業という組織の中には数え切れないほどのノウハウが
蓄積されている。どんな企業でも10年も経営を続けていれば、
それなりのノウハウがあるだろう。
企業どころか、ネットの世界でも多種多様なノウハウがいとも簡単に
入手できる時代。どこもかしこも、ノウハウだらけだ。
しかも、ネットで機密的な情報が流れていることもある。


企業におけるノウハウといえば、知的財産、特許、商品開発情報、
営業手法など。外食産業であれば、秘伝のたれの作り方などは
まさに極秘のノウハウともいえよう。
企業のノウハウといっても現実にはそこに働く社員たちが、
それぞれ担当業務のさまざまなノウハウを保有している。
その社内に点在したノウハウを可視化する動きが昨今、進められている。
社内FAQサイトを立ちあげ、ノウハウの共有を行おうとしている。
FAQサイトに質問を公開すれば、社内の誰かが回答をアップする。
このような、ノウハウの共有、つまりナレッジマネジメントシステム
を導入する企業も増えている。


とはいえ、このように蓄積されていくノウハウだが、
ためるだけならば無用の長物ともいえる存在だ。
ノウハウはいかにして使用し、効果を創出するかが大切である。
蓄積だけしていけば、コストばかりがのしかかってくる。
宝の持ち腐れである。だからこそ、前出の例のように、
社内で蓄積されたノウハウの共有化をはかろうとするわけだ。
すでに述べたように、私たちは情報共有・活用のプロセス
「収集→共有→醸成→活用」の4つのステップで定義している。
蓄積だけしてもなにも生みださない。
共有することで、新たな知恵が醸成される。
そして、真の意味でノウハウなどの活用につながるわけである。


実はこの問題、より深刻なのは製造業の世界である。
団塊の世代以上の引退が進行し、彼らが保有していた
業務ノウハウが後進に継承されていないのだ。
いわゆる技術承継問題である。引退していく方々が
ノウハウを出さないわけではない。
承継する人材の不足と併せ、ドキュメント化が進まず、
タイムリミットが迫っている状況なのだ。


繰り返すが、ノウハウを社内に眠らせておいても
まったく意味がない。コストの無駄である。
だからこそ、いかに社内外に対して活用を推進するかが
求められるのだ。その推進は、単にツールを導入して
解決をはかるという類のものではない。
実は、企業の存続に大きな影響を与えるほど、
極めて重要な経営課題なのである。

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(近藤 昇 著 2015年9月30日発刊
ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する
 第5章 エスカレートする情報過多と溺れる人間-ノウハウをためるだけでは、宝の持ち腐れ より転載)