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【提言10】オンラインでつながるとイノベーションが生まれる


省庁の地方分散化の一環で消費者庁が徳島県への移転のための
テストを行っていたというニュースを見た。
ICT企業が相次いでサテライトオフィスを開設し、話題となった
徳島県神山町と東京の消費者庁を結び、テレビ会議で長官が
記者のインタビューに答えるなどのシーンがニュースで流れ、
「いまひとつ利便性が確認できなかった」「少し使いづらい」
「セキュリティが心配だ」などのコメントが添えられていた。
また、長官自身が各メディアの取材に対し、項目ごとに課題を挙げ、
「有用性に限界を感じた点もある」と感想を述べている。
このニュースを見て、改めてメディアの体質を痛感した。
より利便性を高めるための議論や他の利用シーンにおける
テレビ会議の有用性をなぜ伝えないのか不思議でならなかった。
そんな課題や不満はどんな技術やサービスの初期段階においても
当たり前のように生じる。国は本気でテレワークの普及を
推進する気があるのか、と訝りたくなる。 私達は創業以来、
「アナログが主役でICTはアナログをサポートする」という
スタンスで、ビジネス活動を推進している。
ひたすらICTが企業や社会活動、一般の人々に有効に使われることを
目指してきた。2015年に上梓した
ICTとアナログ力を駆使して中小企業が変革する
(カナリアコミュニケーションズ)に詳しくまとめたが、
ICTの仕組みの中で私が特に可能性を感じているのが
『テレビ会議』である。テレビ会議というのは、今の世間での言い方に
倣うとそうなるだろう。要はインターネットなどの通信回線を使って、
テレビで会議を行うからそう呼んでいるだけに過ぎない。
従来、このテレビ会議は主にビジネスシーンにおいて利用されてきた。
しかし、オンラインで複数拠点がつながると無限の可能性が
広がることは誰でも理解できると思う。私達はインターネットで
顔を見ながらコミュニケーションを行う仕組みでビジネスを進めることを
「オンラインビジネス」と定義している。
ECなどのインターネット通販とは別物である。


例えば、私達が徳島県から委託を受けて行ってきた
サテライトオフィス事業では、このオンラインビジネスでビジネス活動を
行っている。ひとつは「吉野川に生きる会」(徳島県鴨島町)と
連携したサテライトオフィスである巡礼の駅から講師が話して
セミナーを行うことである。東京や大阪の会場をオンラインで
つないでシニアビジネスセミナーを開催し、代表理事の島勝氏に
講演をしていただいた。徳島県にいながら、東京のセミナー会場に
集まった150人近くの聴衆に対して講演をしたのである。
セミナーは講師が聴講者と同じ場所で話をする方が、感動も伝わるし、
講師との交流もできる。リアルな場を共有できることが大切であるのは
間違いないし、当たり前であろう。しかし一方で、いままで
つながることのなかった(できなかった)場所がつながり、
新たな出会いが生まれる。そのことに政府も企業も
目を向けるべきではないか。これが、新たなイノベーションの
起爆剤になりえると私自身は確信している。


地方は特に東京などの都市部との情報格差が課題とされてきたが、
このオンライビジネスを上手に使えば、かなりの部分で解消される。
今まで接点がなかった人たちのつながりができるとさまざまな発想が
生まれたり、従来では想像もできなかった新たなビジネスが生まれたりする。


私達が運営する徳島県のもうひとつのサテライトオフィスが
那賀郡木頭にある。秋には見事な紅葉に包まれる小さな山村である。
先日、この山村の企業(食品加工会社・きとうむら)とベトナムを
オンラインでつなげ、商談会を開催した。この様子は地元の
徳島新聞にも取り上げられ話題となった。ICTの専門家の方々から
すれば、なんてことのないニュースかもしれない。
しかし、ICTに縁遠い、特に過疎の村である木頭から
ベトナム現地への商談会は多くの人に刺激を与えた。


約20年前からベトナムに進出している私達からすれば、
オンラインで現地と日本をつなぎ、ビジネスをするのは
当たり前のことである。オンラインで海外をつないだセミナーは
延べ100回以上も開催している。例えば、私達が2016年に
開催した「アジア食ビジネスチャンスセミナー」ではホーチミン、
東京、大阪の会場をつなぎ、私は東京会場で講演を行った。
カンボジアで農業ビジネスをしている阿古氏は大阪会場で
講演を行い、タイでオーガニック農業ビジネスを展開する
大賀氏はタイの農場からスマホを使って講演を行ったのだ。
こんなことを普通に行っている。

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もうひとつはベトナム南部の地方都市であるカントーで
行われた越日ビジネス・文化交流イベントである。
カントーは120万人(※2016年発刊時点)を擁する
都市でありながら、日本人の存在はほぼ皆無だ。
しかし、日本とのビジネス連携を望む声は多く、
交流イベントを2015年11月に現地の商工会議所などと協力して
3日間開催した。そのメインイベントとして越日観光大使を選ぶための
「美少女コンテスト」が開催された。このコンテストの最中、
当社の東京オフィスのセミナールームがオンラインでつなぎ、
ステージに大きく映し出された。会場の熱気を日本でも
共有することができた次第だ。


これはオンライン利用のほんの一例に過ぎないが、今までの
感覚では考えられないようなつながりが生まれ、
コミュニケーションができ、そこで新たな企画やビジネスが生まれる。


これからは、顔が見えないインターネット上でのコミュニケーョン
ではなく、顔が見えるコミュニケーションの時代へと急速に
移行するのは間違いないだろう。私達は今後も想定外のオンラインの
活用法を提唱していきたいと考えている。それが、人々の生活を
便利に豊かにするものであれば嬉しい限りだ。

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(近藤 昇 著 2016年10月15日発刊
もし、自分の会社の社長がAIだったら?
PARTⅡ 企業経営への提言-【提言10】オンラインでつながるとイノベーションが生まれる より転載)