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【提言13】アジアビジネスこそリーンスタートアップで!


シリコンバレーが改めて注目を浴びているそうだ。
ICT業界に30年近く身を置いてきた私の目には、数年に1度
やってくるトレンドとして注目されているのでは、と考えている。
シリコンバレーといえば、ICTベンチャーが結集し、世界的な
企業が誕生することで有名だ。2015年4月、安倍首相も
シリコンバレーを訪問し、日本の中小企業の当地進出の支援を
後押しすることを発表している。私もちょうどその頃、念願叶って
初めて訪れたが、やはり特別な場所だった。


シリコンバレーでの今の起業のスタイルはリーンスタートアップが
主流だ。例えば、「リーンスタートアップ」(日経BP社)という
一冊は大変参考になる。この書籍の中のスタートアップの定義が
改めて勉強になるのだ。引用させていただく。


〈スタートアップとは、とてつもなく不確実な状態で
 新しい製品やサービスを作り出さなければならない人的組織である〉


実はトヨタのリーン生産方式の考え方から生まれたのが、
リーンスタートアップだとも述べられている。
それよりも、インターネットにある次の説明がすんなりと腑に落ちる。


〈米シリコンバレー発の起業の新しい手法〝リーンスタートアップ〟が
 注目されている。コストをあまりかけずに最低限の製品やサービス、
 試作品を作って顧客の反応を見る。このサイクルを繰り返すことで、
 起業や新規事業の成功率が飛躍的に高まる〉


※出典:NEVERまとめサイト


まさに、今のアジアビジネスの創造にピッタリではないか。
私達がビジネスを展開する場所であるアジアは、
シリコンバレーのようなICTベンチャーが活躍する場ではないし、
そういう時代でもない。日本の30~40年前であるから当然だ。
逆にあらゆる分野にとてつもなくチャンスがある場所だ。
そこへ日本の企業が一気に押しかけているのだが、
今のところは、今までの日本の企業の強みが弱みとなっている。
特に大企業では顕著だ。


もちろん、成熟した日本の大企業のやり方も通用する部分がある。
しかし、これらの企業の海外担当者、とくに現地調査や市場調査を
任されたサラリーマンと関わると実に話が噛み合わない。


日本の大企業の中堅社員といえば、ビジネスの経験が20~30年前後に
達しているだろう。彼らが活躍してきた現場は、成熟した日本経済の中だ。
実は社会的にも経済的にも変化はほとんどない。
自分達は攻めているようでも、実は他国の企業から見れば、
守り一辺倒だ。イノベーションなどごく一部の企業でしか起こらない。
このような経験のまま東南アジアに乗り込んだ場合、
ミスマッチが置きやすい。


本書でも紹介させていただいた「失敗学」が十数年前に流行ったのは
記憶に新しい。高度成長期が始まったころの企業のアーリーステージから
成長期は失敗だらけであった。だから、学びも多いし、強靭でしなやかな
ビジネスの思考と行動が身についた。
ところが、今の企業活動は過去の成功法則にのっとった安全運転が
前提となっている。半永久的にカイゼンが遺伝子そのものである
トヨタのようなイノベーション企業であれば、常に変化適応を
前提とした組織活動ができているだろうし、そういう個人が
存在するのだろう。


そんな大企業がモタモタしているうちに、中小企業にチャンスを
掴んでもらいたい。中小企業こそが大企業に勝つ唯一の方法、
それこそが『リーンスタートアップ』ではないか。


大きな投資などしたくてもできない。まずはやってみる。
そして、やりながら考える。だから大きなチャンスに巡り合う。
これはまさしく戦後復興の過程で、中小企業が躍進してきた
原動力である。


今のアジアにおけるビジネスは、平均的に考えて日本の
数分の一の投資とリスクで挑戦できる。今の日本の大企業は、
狙うマーケットや事業規模が大きいので、必然的に事前調査に
時間と費用をかける。そして、M&Aなどを選択する。
もちろん、こういう戦略も正しい。だが、中小企業には
とても真似できないし、やる必要はないだろう。


レストランの進出がわかりやすい。例えば、ホーチミンを
舞台として考えてみよう。今は第二次飲食業の進出ラッシュだ。
ラッシュといっても、日系だけのものではない。
現地の経営者が日本食レストランを次々と開業している。
必然的に過当競争となる。私の予想では、近隣のシンガポーや
タイと同じ道を進むと思う。数年後に第三次のブームを迎える。
これで今のタイ(バンコク)のような状態に入り、10年後ぐらいに
今のシンガポールのような最終ステージに入るだろう。
じっくり市場調査を重ねることが無駄とは言わない。
しかし、中小企業の社長が直感で決めてスタートしても
足りる段階ともいえる。あるいは、進出国の地方都市で
スタートするならば、市場調査などまったく必要ないと考えている。
そこには、ライバルがほぼいないのだから。
「闇雲にスタートできるわけないじゃないか!」と言われるかも
しれないが、やってみないとわからないことの方が海外では多い。
だからこそ、まずはやってみることが一番重要なのである。

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(近藤 昇 著 2016年10月15日発刊
もし、自分の会社の社長がAIだったら?
PARTⅡ 企業経営への提言-【提言13】アジアビジネスこそリーンスタートアップで! より転載)