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今の日本では触れることのできない刺激的なビジネス

友人であるベトナム人社長のアン女史は
稀有な優れた経営者だ。
日本式の仕事のやり方を教えてほしいと頼まれ、
幹部研修をきっかけにお付き合いして、もう5年以上になる。
6月の中旬、以前から熱心に誘われていた
彼女の砂の採掘現場を訪問し、
日本では見かけることのないダイナミックなビジネスに触れ、
刺激を受けた。
そのビジネスを紹介したいと思う。実は、彼女は10年前に30歳の若さで創業して、
今は砂をシンガポールに販売するビジネスをしている。
彼女曰く、普通は女人御法度で男性社長しかやらない
ビジネスだそうだ。
チャレンジ精神旺盛、男勝りの彼女は、
だから成功できたんだと力説する。

実は3年前にも一度、彼女の採掘現場に行ったことがある。
砂の採掘現場はその時が私の初体験。
知り合って間もなかったこともあり、
研修をするにあたり、まずは会社を理解してほしいと
考えた彼女からの誘い。
アン氏から招待を受けて現場に向かった。
場所はベトナムのお隣であるカンボジア。
訪問先の現場は、大海に注ぎだす大きな川の河口で
首都プノンペンからは相当な奥地。
夕食をプノンペンでとり、ほとんど暗闇の中、
車で現場に向かって5時間ほど疾走。
途中で、小舟に乗り換え、
川に浮かぶホテルについたのが午前2時過ぎ。
ホテルまで小舟で川を下ること小一時間。
真っ暗で流石に不安も頭をよぎった
ジャングルのような場所に現場はあった。

アン氏のビジネスの相手はシンガホールの商社。
シンガポールはこの先20年以上、
埋め立てによる国土の拡大を続けているという。
これには驚いたと同時に、
そのビジネスをアン氏が担っていることに、
そしてそのスケールの大きさに感嘆した。

今回の行先はベトナム国内。
リゾート地で有名な南部のニャチャンの近く、
カムラン湾に注ぎ出す大きな川の河口だ。
半年前から誘われていたが、
ようやくなんとかお互いに時間を調整。
アン氏らと数人のベトナム人、
バイヤーのシンガポール人と
タンソンニヤット空港で待ち合わせ。
空路1時間足らずで、カムラン国際空港へ到着。
すぐに更に車で一時間弱の河口の現場視察に向かった。
小雨がぱらつく中、皆で現場の写真撮影。
そこには、昔日本でよく見かけた
川の浚渫工事の様子が広がっていた。

1日目は現場を岸から見ただけで終了。
アン氏が予約したリゾートホテルにチェックイン。
こんな場所にあるリゾートホテルの存在にも驚き。

 

 

夜は近くのベトナム料理レストランへ。
バイヤーのシンガポール人とハノイから来た
アン氏の新しいビジネスパートナー候補の
面々が本気モードのビジネスディナー。
私は、このビジネスに関しては部外者。
アン氏にとっての今回の私の招待はなんだろうと、
そんなことも脳裏をよぎりながらも、考えても仕方がなし。
片言英語で和やかに歓談する。
そして、これで終わってくれたらよかったのだが・・・
勢いのついた面々は現地のカラオケへ直行。
そこではベトナムの歌で大盛り上がり。
そういえば、アン氏はカラオケ大好きだったな・・・と
ふと思い出す。
予想外に日本の歌もあったが、
あまりに古すぎて歌える歌はほとんどなかった。
もう何年も前から聞きなれたお馴染みのベトナムの歌を
浴びるほど聞きながらのくつろぎタイム。
深夜も近づき早朝に備えて解散となった。

翌朝は、アン氏の予言通り、快晴。
空には早朝から爆音炸裂。
空軍が近くにあり、南沙諸島の件もあってか
戦闘機の訓練で騒々しい。
AM5:45集合の予定が、
ここもまたまたベトナムタイム。
出発したのは45分遅れとなった。
早速、船に乗り込み、船の上から砂の採掘現場の見学。

 

 

アン氏がにこやかに色々と説明してくれた。
ここの港は、少し前にオープンした様子で、
私たちが政府から依頼されて、漁港を新設した。
2億円のコストがかかったけど、
漁師の方々から本当に感謝されたという。
もちろん、アン氏も砂の販売で十分利益が出ているのだが。

カンボジアに訪問した頃のアン氏はこう語っていた。

「砂のビジネスはある意味では、
環境問題を引き起こす可能性がある。
だから、自分はバランスをとるために何かで社会に貢献したい」

彼女は以前から、恵まれない子供たちの
学校を建設しようと活動したり、
孤児院のサポートなどを行っていた。
今回、採掘現場に来て、彼女の伝えたかったことが
ようやく理解できた気がする。
それは、砂の採掘ビジネスが現地の住民の感謝に繋がったことを
私に伝えたかったのだろう。

先進国では金儲け至上主義が跋扈し、
社会に対する使命感に欠けるビジネスが多いと感じている。
地域の発展や住民の生活向上に繋がるビジネスこそ
経営者としてスケールの大きさに尊敬の念を抱く。
もちろん、いつか私もそんなビジネスを実現したい。
そんなことを考えながら、採掘現場を後にした。

 

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